『菌と喀血と俺~ワイバーンの華麗なる結核ライフ~』
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2 ラダマンティス、告知される
「…ラダマンティス、ラダマンティス」
俺を呼んでいるのは……ミーノスか?
「さようなら、ラダマンティス。再びお目に掛かる日まで…」
何だ?
ミーノス…何故、涙ぐんでいるのだ?
「バイバイ、ラダちゃん。またいつか…ね」
…アイアコス!
お前まで、泣いていやがるのか?
「お世話になりました、ラダマンティス様……」
「今まで本当に…お疲れ様でございました」
「これからは、もうごゆっくり、お休みになられてください…」
バレンタイン、シルフィード、クィーン、ゴードン!!!
お前たち、一体何を申しておるのだ?
そのように号泣などして……
みっともない、泣くのを止めろ!!
…おい、待て。
何処へ行こうとするのだ?!!
皆、待ってくれ……!!!
俺は、遠ざかって行く彼らを追いかけようとしたが、脚がもつれて動かぬ。
何…だ?
ここは…この光景は……。
見知った場所だ、驚きはせぬ。しかし……。
俺はいつの間にか、死界の穴へと向かって行進する亡者どもの列に加わっていた。
「お前は死ぬのだ、ラダマンティス」
「さあ、我々と共に、あの穴の中へ……」
左右から、無数の手が伸びて来る。
止せ!
俺に触れるな!!
俺は抗おうと試みたが、その意志とは裏腹に、奴らと同じ方向へ歩を進めていた。
誰かに。
腕を掴まれた。
「…パンドラ様!」
「何処へ行く?ラダマンティス……」
パンドラ様は険しい表情で、真っ直ぐに俺を見据えられた。
俺は亡者どもの列から離れて、パンドラ様と向き合った。
「は…。どうやらこの命、尽きる時が来たようでございます……」
パンドラ様の瞳は怒りに満ちておられたが、──悲しみをも湛えられているように見えた。
…俺の自惚れであろうか。
「お前は、死ぬ気か?ラダマンティス。冥界を担う三巨頭としての任務を放り出し、お前を慕う者等も棄てて、…私をも棄てて……逝こうとするのか?お前が望んで行きたいのであれば、私に止めることは出来ぬ」
突き放されるようなパンドラ様のお言葉に、まるで氷の剣でえぐられたようなずきりとした痛みが胸を襲った。
俺は必死の態で否定した。
死ぬ気か…ですと?
まさか!
自ら死を望んだことなど、只の一度たりともございませぬ!!
三巨頭の責務を全う出来ぬまま?
友や部下たちを見捨てて?
…貴女様を置いて……?
死ねない。
死にたくない。
決して死にたくなど……ございませぬ!!!
俺は声にならない叫び声を上げて、パンドラ様に訴え続けた。
すると…
パンドラ様は、ご満足気に頷かれ、にこりと微笑されると ───そのお姿は、ふっと掻き消えてしまわれた。
再び死界への穴へと誘おうとする亡者どもを、俺は睨みつけた。
「このラダマンティス、貴様等と共になど行かぬわ!!皆、消え失せるがいい。食らえ!グレイテストコーション~~~ッ!!!」
夢の中…もしくは、死の手前で必殺技を放った瞬間、俺は目醒めた。
胸部X線撮影、喀痰検査を経て一週間の後。
第二獄外れの花畑の傍にひっそりと建つ病院の一室で、ラダマンティスは医師から淡々と病名を宣告された。
肺結核…と。
「…それで。どのくらいここに居ればよいのだ?」
「半年は見積もって頂きます」
たとえ相手が冥界三巨頭のひとり、天猛星ワイバーンのラダマンティスであろうと、医師は臆することなく、表情一つ変えずに答えた。
ラダマンティスにはそのにべもしゃしゃりも無い態度がやや腹立たしかったのだが───治療法などを無機的に次々と説明して行く医師の言葉を遮った。
「すまんがドクター、酷く頭痛がする。説明は後にしてくれ……」
ラダマンティスが擦れた声で告げ、硬く目を閉ざしたのを確認した医師は一礼すると、黙って病室から出て行った。
医師が退出した後も、ラダマンティスは瞳を閉じたままであった。
半年…
半年だと?
莫迦な!
『── 一切の希望を捨てよ』
地獄門に刻まれたフレーズが頭をよぎった。
なにも、絶望したわけではない。
ただ……
半年…半年もの長い間、前線に立つことが敵わぬとは……!!
誰よりも屈強であると自負していた己の肉体が、過去の産物のような病に侵されたのも口惜しいが、半年という長い期間、第一線から退かねばならぬことの方がより一層口惜しかった。
病床のラダマンティスは目を閉じたまま、ギリと歯噛みをして、無念の涙が溢れて来そうになるのを只々こらえた……。
龍
俺を呼んでいるのは……ミーノスか?
「さようなら、ラダマンティス。再びお目に掛かる日まで…」
何だ?
ミーノス…何故、涙ぐんでいるのだ?
「バイバイ、ラダちゃん。またいつか…ね」
…アイアコス!
お前まで、泣いていやがるのか?
「お世話になりました、ラダマンティス様……」
「今まで本当に…お疲れ様でございました」
「これからは、もうごゆっくり、お休みになられてください…」
バレンタイン、シルフィード、クィーン、ゴードン!!!
お前たち、一体何を申しておるのだ?
そのように号泣などして……
みっともない、泣くのを止めろ!!
…おい、待て。
何処へ行こうとするのだ?!!
皆、待ってくれ……!!!
俺は、遠ざかって行く彼らを追いかけようとしたが、脚がもつれて動かぬ。
何…だ?
ここは…この光景は……。
見知った場所だ、驚きはせぬ。しかし……。
俺はいつの間にか、死界の穴へと向かって行進する亡者どもの列に加わっていた。
「お前は死ぬのだ、ラダマンティス」
「さあ、我々と共に、あの穴の中へ……」
左右から、無数の手が伸びて来る。
止せ!
俺に触れるな!!
俺は抗おうと試みたが、その意志とは裏腹に、奴らと同じ方向へ歩を進めていた。
誰かに。
腕を掴まれた。
「…パンドラ様!」
「何処へ行く?ラダマンティス……」
パンドラ様は険しい表情で、真っ直ぐに俺を見据えられた。
俺は亡者どもの列から離れて、パンドラ様と向き合った。
「は…。どうやらこの命、尽きる時が来たようでございます……」
パンドラ様の瞳は怒りに満ちておられたが、──悲しみをも湛えられているように見えた。
…俺の自惚れであろうか。
「お前は、死ぬ気か?ラダマンティス。冥界を担う三巨頭としての任務を放り出し、お前を慕う者等も棄てて、…私をも棄てて……逝こうとするのか?お前が望んで行きたいのであれば、私に止めることは出来ぬ」
突き放されるようなパンドラ様のお言葉に、まるで氷の剣でえぐられたようなずきりとした痛みが胸を襲った。
俺は必死の態で否定した。
死ぬ気か…ですと?
まさか!
自ら死を望んだことなど、只の一度たりともございませぬ!!
三巨頭の責務を全う出来ぬまま?
友や部下たちを見捨てて?
…貴女様を置いて……?
死ねない。
死にたくない。
決して死にたくなど……ございませぬ!!!
俺は声にならない叫び声を上げて、パンドラ様に訴え続けた。
すると…
パンドラ様は、ご満足気に頷かれ、にこりと微笑されると ───そのお姿は、ふっと掻き消えてしまわれた。
再び死界への穴へと誘おうとする亡者どもを、俺は睨みつけた。
「このラダマンティス、貴様等と共になど行かぬわ!!皆、消え失せるがいい。食らえ!グレイテストコーション~~~ッ!!!」
夢の中…もしくは、死の手前で必殺技を放った瞬間、俺は目醒めた。
胸部X線撮影、喀痰検査を経て一週間の後。
第二獄外れの花畑の傍にひっそりと建つ病院の一室で、ラダマンティスは医師から淡々と病名を宣告された。
肺結核…と。
「…それで。どのくらいここに居ればよいのだ?」
「半年は見積もって頂きます」
たとえ相手が冥界三巨頭のひとり、天猛星ワイバーンのラダマンティスであろうと、医師は臆することなく、表情一つ変えずに答えた。
ラダマンティスにはそのにべもしゃしゃりも無い態度がやや腹立たしかったのだが───治療法などを無機的に次々と説明して行く医師の言葉を遮った。
「すまんがドクター、酷く頭痛がする。説明は後にしてくれ……」
ラダマンティスが擦れた声で告げ、硬く目を閉ざしたのを確認した医師は一礼すると、黙って病室から出て行った。
医師が退出した後も、ラダマンティスは瞳を閉じたままであった。
半年…
半年だと?
莫迦な!
『── 一切の希望を捨てよ』
地獄門に刻まれたフレーズが頭をよぎった。
なにも、絶望したわけではない。
ただ……
半年…半年もの長い間、前線に立つことが敵わぬとは……!!
誰よりも屈強であると自負していた己の肉体が、過去の産物のような病に侵されたのも口惜しいが、半年という長い期間、第一線から退かねばならぬことの方がより一層口惜しかった。
病床のラダマンティスは目を閉じたまま、ギリと歯噛みをして、無念の涙が溢れて来そうになるのを只々こらえた……。
龍
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プロフィール
HN:
龍峰&お竜
性別:
非公開
自己紹介:
龍峰:ラダ最愛のパンドラ様。
お竜:ミロ最愛の浮気性。
初めての方はトップをよく読んでから最古記事へ
いつもの方は最新記事へどうぞ。
お竜:ミロ最愛の浮気性。
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