『菌と喀血と俺~ワイバーンの華麗なる結核ライフ~』
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その時。
まばゆい光が病室の入り口に炸裂した。
二重三重に光線が放射線状に連なり、空気まで白に染まったような神々しい輝き。
「な、なん…?!」
掠れたラダマンティスの声は最後まで台詞を紡げなかった。
目も開けられない程の眩しさとは対照的に、全くの無音で。
2人の男が突然病室に出現したからだ。
「…ごきげんよう」
大きな角を模した黄金の鎧。
白く青く輝くマントは風もないのに緩やかにはためく。
白い肌にほんのり色づく頬。
藤色の柔らかに艶めく長い髪を緩く結わえて。
少女のように優しい貌をした男は軽く目を伏せてそう挨拶をした。
「~~~ッ!?」
突然の来訪者を震える手で指差し、金魚のように口をパクパクさせているラダマンティス。
「この眉毛が君の顔面を鷲掴みにした男かね」
「わッッ」
ヒョイ、とムウの背後から顔を出した長い金髪に更に驚くラダマンティス。
こちらを観察しているのかと思えば、その双眸は硬く閉じられていて益々訳が分からない。
目を白黒させて絶句しているラダマンティスを尻目に、ミーノスは一歩前へ出た。
「わざわざのお出迎え、痛み入ります」
お出迎え!?
どういう事だ?!
多分ラダマンティスはそう言いたいのだろうが、もう言葉にはならない様子だった。
アイアコスは軽く手を挙げて「どーも」と微笑む。
「ええ、わざわざ出向いてきましたよ。アテナに指示されたのでなければ二度とこんな陰気な所に来る事もありませんでしたがね」
ムウはにっこりと零れんばかりの微笑みを讃えて答えた。
「俺コイツ苦手…」
アイアコスがひそかにミーノスの腹に肘鉄を入れたが、ミーノスは相手にしない。
「ええ、ご迷惑おかけしますがよろしくお願いしますよ」
アイアコスが見た事もないような笑顔で、ミーノスも爽やかに答える。
「うわあ何この空気。おいラダちゃん、何とかしてよ」
逃げ腰のアイアコスは、いまだ固まったままのラダマンティスの肩を揺さぶった。
「あ?ラダちゃん?…駄目だこりゃ。魂抜けてる」
呆然と口を開けたままのラダマンティスにいきなり近寄る長い金髪。
「私が成仏させてやろう」
「おやめなさいシャカ」
シャカと呼ばれた男はムウに止められ憮然とした表情で一歩後ろに引いた。
「ああ、あんたがシャカ!道理で覚えのある小宇宙だと思った」
ポンと手を打ち嬉しそうにしているアイアコスに、ようやくラダマンティスが正気を取り戻す。
「アイアコス、貴様何を嬉しそうに…!と言うかこの状況は一体何なのだ?!説明しろ、ミーノス!…クッ、ケホ」
歯軋りと咳を交えながら、ラダマンティスは吐き捨てるように怒鳴った。
「眉毛は黙りたまえ」
「なッ!…ッゲホ!」
まあまあ、と両手で制するアイアコス。
「ラダマンティス、あなたはこれから彼等と共に地上の療養施設に向かうのですよ。そして治るまでそこで暮らすのです」
淡々と説明するミーノスの言葉に、ラダマンティスの顔色はどんどん蒼白になっていく。
「私達としても色々考えたのですが、やはりこの冥界はあなたのその病気を治すには不向きです。ハーデス様とパンドラ様の御命令通り地上でしっかり治していらっしゃい。送って差し上げたいのは山々ですが、私達にはたまり溜まったカイーナの仕事がありましてね。ですから」
ですから、とミーノスは金色に輝く2人をチラリと睨めつけた。
「地上の方でエイトセンシズに目覚めてんのは聖域の連中だけだからさ、来て貰ったって訳?」
アイアコスがミーノスの言葉を引き継いで続ける。
「私達としても非常に不本意ですがね。仕方ありません、行きますよ」
ムウはマントをパサリと翻すと、面倒くさそうな顔でラダマンティスの左腕を掴んだ。
「……」
シャカも無言で反対側に回り、ラダマンティスの右腕を捕まえる。
「あ、オイ!!やめろ!何をす」
ラダマンティスの声は台詞の途中でかき消えた。
残ったのは幾重にも連なった光の残像と、ベッドの温もりだけ。
ふう、とミーノスが息を吐く。
アイアコスもやれやれと首を鳴らした。
「静かになったな、冥界も」
「ええ」
「あーあ。昼メシも食わずに行っちゃったよ」
「あまりお腹が空かないそうですから、別に良いのではないでしょうか?」
「ふーん。そーなの?」
適当に返事をし、アイアコスはラダマンティスに出された昼食の里芋の煮っ転がしをひとつ、バクリと口に放り込むと、感嘆の声を上げる。
「…病院食ってもっとマズいもん想像してたけど……ウマーーーー!!!!!(・∀・)♪」
ミーノスは苦笑しながら、3人の消えたベッドの辺りを見つめるのだった。
さて、渦中の人はというと。
一瞬目の前が真っ白になって、頭の中も真っ白になって。
ぐにゃりと視界が歪んだと思ったら、先程と同じ状況に戻っていた。
病室の白い壁。
白いシーツに硬めのベッド。
左右には金色の闘士と光の残像。
ただ違ったのは、窓の外の光景。
透明な空気が木々を揺らしていた。
緑でいっぱいの背景に、青い空。
少しだけ開けられた窓の隙間からは、濃い酸素を含んだ湿った風が吹き込んでいる。
「ここは…?!」
キョロキョロと見回せば確かに、病室の様子は先程まで居た部屋とは少し様子が違っていた。
ベッドや壁は似たような造りだったが、備え付けの椅子、サイドテーブルの素材、揺れるカーテンの色。
「お察しの通り、地上ですよ」
「本当なのか?!ここは本当に地上…な…のだな…」
ガックリと肩を落とすラダマンティス。
「ここでしばらく過ごす事になりますので、観念なさい」
相変わらず面倒くさそうに言い放つと、ムウは大きなため息を吐き吐きマントを外した。
「シャカ、着替えますよ。…って、もう脱いだんですか」
ムウの言葉にシャカを見れば、いつの間に着替えたのか深いブラウンのスーツ姿に変わっていた。
品の良い白いシャツを合わせて、ずいぶんと小綺麗にしている。
「……」
そのうち何を見ても驚かなくなるんじゃないか。
ラダマンティスが恨めしそうにムウを振り返れば、やはりシャカと同じくあっという間に着替えは完了していた。
薄ピンクのシャツに紺のブレザー、足元は上から羽織った白衣であまり良く見えない。白衣?
「…白衣?」
「ここはアテナの…城戸沙織総帥の息のかかった病院です。私は医者の名目でここに常駐する事になってますんで」
「貴様が医者だと…?悪い冗談だろう」
「私もそう思います。それと、常に黄金聖闘士が数名君の護衛につくからそのつもりで」
ムウはもう何度目かわからないため息をついて備え付けの椅子に座った。
シャカは口元に薄笑いを浮かべて窓際に寄りかかっている。
ラダマンティスは改めて目の前の光景を認識して、そしてゾッとした。
この狭い病室に、複数の黄金聖闘士と軟禁状態。
「拷問ではないか…」
「フン」
ラダマンティスの呟きに楽しそうに反応するシャカ。
「じきにアテナが来られる。お前もアテナに接すれば結核菌ごと浄化されるであろうよ」
「貴様らの神は消毒液か何かか」
「不遜な物言いはここでは慎んだ方が良いですよ、忠誠心厚い瞬間湯沸かし器が数人控えてますからね」
ムウはニコリと口角だけ引き上げる。
ウンザリしてラダマンティスがぽすんと枕に頭を乗せた時、ガチャリとドアが開いて話題の人物が顔を覗かせた。
大きく包み込むような、圧倒的な小宇宙。
「ああ、無事に到着しましたね。ムウ、シャカ、ご苦労様でした」
「いえ、造作もない事です」
女神の労いの言葉にいつの間にかムウとシャカは膝をついて首を垂れている。
ラダマンティスもベッドから体を起こしてまっすぐ沙織を見つめた。
「ワイバーン、パンドラさんから全てお話は承っています。完治するまで、ここでゆっくり治療に専念してください」
「…アテナ。何と言って良いのか皆目見当もつかんが…たかが俺の治療如きにここまで厳重にせずとも」
ああそれは、と沙織は首を傾げてニッコリと笑う。
「パンドラさんから強くお願いされたんです。厳重に見張るように、と。二度と脱走など企てぬように、と」
沙織の言葉にシャカとムウがニヤリとしたのが分かって、ラダマンティスの耳たぶが真っ赤に染まる。
「…ッぬ!脱走なぞ、せんわ!」
「それなら良かった」
クスクスと笑いながら沙織は部屋を出て行ってしまった。
ムウとシャカも立ち上がり、沙織の後に続いて出て行く。
バタン。
ドアが閉まって、ラダマンティスはバタリとベッドに倒れ込んだ。
先が、思いやられる……
さっさと日本での仕事に戻っていく沙織を病院の玄関で見送る数人の若い男たち。
このひなびた古い病院にはおよそ似つかわしくない、屈強な体つきに精悍な面構え。
かと思えば女のように美しい者もいて、さらに異様な雰囲気を漂わせていた。
「何故我らが冥闘士などの護衛をせねばならんのだ」
「仕方あるまいよ。アテナのご命令とあっては」
「その割にはお前、楽しそうだな」
「いつぞやの恨みを晴らせる良い機会だ」
ひときわ体格の良い真面目そうな短髪の男…アイオリアは目の前の女と見まごう美形の言い草にウンザリしたような表情を向けた。
長い睫毛を震わせて、美形…アフロディーテは楽しそうにクツクツと笑い隣の男を小突く。
「なあ、デスマスク」
小突かれた男はケッと言わんばかりの表情で煙草に火を点けた。
そして思い切り吸い込み、フウと煙と一緒に吐き捨てる。
「関わりたかねーよ」
「まったくです」
珍しくデスマスクに同意するムウに、シャカがおやという表情で笑いかけた。
「先程からずいぶんと辛辣ではないかね?ムウ」
「・・・」
黙って答えないムウに、ボリュームたっぷりの青い髪の男がフフンと鼻を鳴らした。
「俺達はアイツにずいぶん痛めつけられたからな。さすがのムウも冷静ではいられまい」
「ミロ、お前は冷静だとでも?」
黒い短髪、目つきが異常に鋭い男が口をはさむ。
「俺か?俺は済んだことにはツベコベ言わん主義でな、シュラ」
ミロと呼ばれた男はニカッと笑ってウィンクしてみせた。
「それは単に忘れっぽい性格なだけだろうが」
それまで黙ってやり取りを観察していた涼しい顔つきの深緑の長髪が冷静に突っ込む。
「カミュ!それを言うな」
「はっはっは!」
男たちの中でも異常にガタイの良い大男が楽しそうに声を出して笑った。
「笑い事ではありませんよ、アルデバラン。あの男の寄越した冥闘士のせいであなたはやられたのですよ?」
「なに、ミロじゃないが俺も済んだことは気にせん主義だ。あいつもあの時は己の使命の為にそうしたにすぎん。俺達はやるべき事を互いにやりあっただけの事ではないか」
それはそうですが…と黙り込むムウ。
「アテナのご命令だ。粛々と任務を遂行するとしよう」
アイオリアの言葉に、一同(数名は渋々と)頷くのだった。
環境の変化のせいか、病のせいか。
ラダマンティスは当初敵地で捕虜になったような気分で落ち着かず、緊張感を抱えたまましばらく起きていた。
だが、独りきりの病室に次第に瞼が重くなり、倦怠感もあってうつらうつらとそのまま寝入ってしまった。
一瞬うなされて目覚めれば、窓の外からは相変わらず透明な風がそよそよと吹き込んでいる。
「夢、ではなかったか…」
がっくりとうなだれる。
己が地上に、ましてや聖闘士共と同じ場所に居るなど、悪い夢以外の何物でもないと言うに。
喉の渇きを覚えたがあいにく水差しもグラスも見当たらず、ラダマンティスは重い体を何とか起こした。
僅かではあるが空腹感も感じる。
見知らぬ土地で水も飲めず腹も減り、認めたくはなかったが一抹の寂しさを覚えた。
「ゴホッ!ゲホ…」
相変わらずの微熱と咳に気も滅入る。
と、突然
「薬の時間だぞ!ラダマンティス!」
大声で入ってきたのは見覚えのある顔だった。
「貴様…スコーピオン、か」
つかつかとベッドに歩み寄り、ガチャンとトレイをサイドテーブルに置く。
「おう、覚えていたのか。いかにも俺はスコーピオンのミロだ」
「ミロ、トレイは丁寧に置け。水がこぼれた」
涼しげな顔が後から続ける。
「お前は…アクエリアスのカミュ、だな」
「……」
カミュは何も答えず水差しの水をグラスに注ぎ、黙ってラダマンティスに手渡す。
「飲め。薬を飲まずにこっちに来たろ?飲まないと治るものも治らん」
ミロが投げて寄越した薬をラダマンティスは慌てて掴み取った。
「貴様ら…何人来ているんだ?アリエスは数人と言っていたが」
「そのうち嫌でも分かる。いいから飲め」
カミュが静かに凍気を発して服用を促すので、ラダマンティスは仕方なく薬を口に放り込み水を含んだ。
渇いた喉にぬるい水がぐんぐん吸収されていく。
地上の水は、少し甘い気がした。
「夕食までは俺達が話し相手だ。もう少し回復すればそのうち散歩も許されよう。諦めて養生に専念するのだな」
ミロは殊の外楽しそうに丸椅子を占拠してラダマンティスのベッドに肘をついた。
カミュは部屋の端にあったパイプ椅子を窓際に置いて座る。
「ミロ、話し相手と言っても彼はまだ熱も咳も出ている身。あまりうるさくするものではない」
「分かっているさ」
グラスの水を一気に煽ったラダマンティスは、ようやく人心地ついたのかフウと息を吐いた。
そんな様子を見て、カミュが小さく呟く。
「すまんな、水を用意するのが遅れた」
「…貴様が俺に謝るのか?…この俺に」
「今となっては詮無い事だ」
静かに言葉を交わす2人に、ミロが口をはさむ。
「おお、お前寝てる時水水ってうなされてたぞ」
「は?!俺の寝てる時ここにいたのか?!」
「勿論居たとも。さすがの翼竜殿も寝顔は穏やかなのだな」
「・・・ッ貴様!ゲホッ」
「大丈夫か?」
ミロは悪意のない笑顔でラダマンティスの背中をさすってやる。
「触…るな!」
振り払う腕も力なく空を切るだけだ。
ここに来てラダマンティスは本気で泣きたい気分になった。
「クソ…!」
「落ち着け。…まあ無理だとは思うが…そう興奮しては症状も治まらん。このままここにずっと居たいのなら構わんが、早く戻りたいのであれば大人しくしていることだ。それに、少なくとも私とこのミロは、別にお前を憎んではいない。当然馬鹿にもしていない。…今は互いに務めを果たすべきだ。違うだろうか」
カミュが穏やかな口調で諭すでもなく訥々と喋り出し、ミロは頷きながら再びドッカと腰を下ろす。
「ラダマンティス。熱くなるな。熱が上がる。そうなれば咳も出よう。・・・早く治して、お前はお前の居るべき場所へ帰るのだ。その為に今は耐えろ」
カミュの言葉にラダマンティスは遠い冥界の地を思い浮かべる。
肌に馴染む真っ暗な空。
自分を慕う部下達。
タイプは違えど同じ指揮官として神話の頃から共に闘ってきた友。
そして、あの、いとおしい・・・
ラダマンティスは静かに目を瞑る。
瞼に浮かぶ、漆黒の髪。
ハア。
ラダマンティスは一つ大きく息を吐いた。
そしてカミュに振り返り、地上に来て初めて弱々しく笑った。
「分かった。感謝する、アクエリアスよ」
そこからの日々はずいぶんと穏やかなものだった。
アフロディーテのちょいちょい出る嫌味にも青筋立てつつ耐えられるようになったし、アルデバランが当番の時は何となくその顔に親しみを抱かずには居られない程だ(きっと眉毛のせいだろう)。
デスマスクの看護婦とのやり取りはアイアコスを思い起こさせ、深く話すことは無くとも自然に過ごせるようにもなっていた。
シュラは…聖戦時の云々という問題ではなく、単に無口な男なのだろう、会話が特に弾むことは無かった。だが、彼の時折見せる女神への忠誠心や生真面目さは好感の持てるもので、目つきの悪さからもなんとなくバレンタインを思い起こさせてくれる。
非番の時はいつも修練に明け暮れているのだとミロから聞いて、さもありなんと納得したものだ。
アイオリアは当番初日だけ、ラダマンティスに冷たく当たった。しかし翌日カミュと共に現れ、照れ臭そうに一言「すまん」と呟いて以来、親しく話せる間柄になっていた。裏表のないその人柄はきっと誰からも愛されるのだろう、とラダマンティスは微笑ましく思う。
総じて、先が思いやられた黄金聖闘士たちとの生活も、概ね平和だったと言っていい。
しかし、あの男だけは別だった。
「…ブフッ!!!」
「おや、お口に合いませんでしたか?」
「何だコレは…」
「ジャミールからわざわざあなたの為に取り寄せたのですよ、ラダマンティス。肺の病に効く薬草を煎じて煮詰めたものです」
「…(更に血を吐きそうなんだが、ホントに効くのかコレ…)」
「さあ、お飲みなさい(ニッコリ)」
「うう(泣)」
ムウは相変わらずの目だけが笑っていない笑顔でラダマンティスと対峙している。
いや、呼び方が『お前』から『あなた』に変わっただけマシなのかもしれない。
「毒を以って毒を制す、かね」
シャカは何故だかいつもムウと一緒に現れては澄まし顔で茶を飲んだり瞑想したり居眠りしたりしていた。
「盛って、の間違いだろうが」
「なに、たいした差ではなかろう」
薄く微笑むシャカの目は相変わらず閉じられたままで、こんな変人は冥界にも居なかったとラダマンティスは思う。
ミューは体質が異常だが中身はそれなりの青二才だったし、ライミはおかしな男だったが異常ではなかった。
どちらかと言うと双子神…そちらに近いような印象を受ける。
シャカから常に感じる不快感に近い感覚は、彼が神に最も近い男たる証明であるかもしれない。
かと言って、シャカには悪気は無いようだった。
純粋に、ここにいる事を面白がっているだけのようだ。
「毒などとは、失礼ですね」
ムウは結局飲み干せなかった湯呑をラダマンティスから受け取り、サイドテーブルに薬草の煎じ汁の入った瓶を置いた。そして言葉を続ける。
「この薬も彼も、毒ではありませんよ、シャカ」
「おや」
シャカが顔を上げ、そしてラダマンティスはその瞳が開くのを初めて見た。
「あ」
スカイブルーの、美しい瞳。
初めて見るシャカの顔に、ラダマンティスは思わず釘づけになる。
「どうしたのかね?ムウ」
「どうもしませんよ」
「…ふむ。なるほど興味深い」
シャカ、あなたに興味を持たれるとろくな事がない。
ムウはそう言って白衣の襟を正すとさっさと部屋を出て行ってしまう。
「?まだ時間ではなかろう。用事でもあるのか、ムウは」
「フン。お前は愚かだがなかなか見所がある」
何だそれは!ラダマンティスはそう噛み付いたが、シャカはそれきり黙って再び目を閉じ、そのまま瞑想に入ってしまった。
・・・・ムウとコイツだけは、全く分からん。
ラダマンティスはシャカとの会話を諦め、起こしていた体を横たえ目を閉じるのだった。
竜
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HN:
龍峰&お竜
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非公開
自己紹介:
龍峰:ラダ最愛のパンドラ様。
お竜:ミロ最愛の浮気性。
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